2004年12月09日

『鎮魂歌(レクイエム)』

ハヤカワ文庫FTの企画シリーズ《プラチナファンタジー》の一冊。

鎮魂歌
グレアム・ジョイス 浅倉 久志

早川書房
2004-05-25
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不慮の事故で妻を失い、教職を辞した主人公は、旧友を訪ねて聖都エルサレムへ向かう。3つの宗教が絡み合うその街で彼を襲う幻想と陰謀の数々。古文書を秘匿する老人、その古文書をねらう黒服の男、謎の文字をのこして消える無気味な老婆。自分と聖書に隠された過去が明るみに出る時、彼に何が起きるのか。

ジョナサン・キャロルの新刊を空しく待ち続ける日々の中、久しぶりに出会った傑作ファンタジー。読みながら何となくキャロルみたいだなあと思っていたら、東雅夫氏による解説に、作者の公式サイトの冒頭にジョナサン・キャロルによる賛辞が掲げられていると書いてあった。ナットク。

全体に、キャロルに比べると重くて混沌とした感じなんだけど、隠蔽された記憶と信仰を巡って、次々と意味ありげな幻想や夢が主人公を襲う展開は、やはりキャロルを思わせるような気がする。東雅夫氏は『我らが影の声』などに雰囲気が近いかも、と言うようなことを書いており、僕自身は別の場所で紹介した際、むしろ『空に浮かぶ子ども』や『犬博物館の外で』を思わせる、と書いたのだけれども、今になって思うと『沈黙の後』の最終章ってのが一番近いような気もする。

キャロルとのより具体的な大きな違いは、全編を覆うエロティシズム。エロと幻想、あるいは恐怖というのは相性が良いらしく、多くの作品が互いの効果を高めるのに使っているわけだけれども、この作品はその成功例の一つだと思う。さらに、作中でのセックスはより根源的なテーマ、聖書にまつわる謎ともからみあっていて、混沌とした幻想のさなかからそれが浮かび上がってくる様には、読んでいてぞくぞくさせられる。

ところでその『聖書の真相』だけど、実際にこう言う学説なり異説なりってあるのかな?あるとしたらぜひ詳しく知りたいところです。
posted by けいりん at 16:40| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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