2004年12月09日

『西城秀樹のおかげです』

日本SF大賞ノミネートの傑作短編集が新作一編を加えて文庫化。

西城秀樹のおかげです
森 奈津子

早川書房
2004-11-09
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まずタイトルがスバラシイ。こんなバカなタイトルは考えたってなかなか思い付くもんじゃない。森奈津子天才。

その表題作は、地球最後の男と女が繰り広げる、愛と希望のドラマ。
いや、嘘は言ってないって。
だってホントにそうなんだもん。
もちろんあの森奈津子のことであるからその「愛」をストレートに二人の間の愛と思っていると痛い目に会うわけだし、そもそも「男と女」ってのも生物学的性差に過ぎないわけなんで、その辺をひとヒネリしてるあたりがなんともSFだよなあ、なんて思ってみるわけだけれども、実はそんな僕の言葉を鵜呑みにしてマジメなSFだと思って手に取ってしまった人も、バカを見てしまうわけなんである。

だってねえ。
よく考えて御覧なさいよ。
『西城秀樹のおかげです』だよ。
バカでないわけがないじゃん!

まあそのバカさ加減についてはさておき、人類規模の物語となるとやたら大義名分が目に付くかあるいはひたすら内省的になってしまうかのどちらかが圧倒的に多く、ついでに言ってしまうとその傾向は現実世界でもあまり変わらないような気がするのだが、そんな中徹底して脳天気なエゴイズムを貫き通し、めでたしめでたしのラストにいたるこの爽快さは全く素晴らしい。だいたい「人類のため」とか「みんなのため」とかそういうことを言うやつにろくなやつはいないのだ。例外は五代雄介だけだ。ましてや「愛は地球を救う」なんてまったくキチ*イじみたタワゴトだ。「愛はオレ様をすくう」ならまだわかるけど。

他の短編も、常識を笑い、非常識をコケにし、快楽を追求するその姿勢がなんとも清々しくもインビで心地よい。表題作以外のお気に入りは『哀愁の女主人、情熱の女奴隷』と『地球娘による地球外クッキング』ってとこかな。前者は「繰り返されるシチュエーション」ギャグの見本のような作品、後者はSFファンとして共感と脱力を感じずには読み進めることができない。
posted by けいりん at 22:43| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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