2006年02月17日

『SFが読みたい! 2006年版』

 もうでてから一週間くらい経っちゃいましたが、ちょっと感想をば。

■「ベストSF2005」
 文庫中心に読んでいる上に、年間読書の新刊率はとても低い方なので、ランクインしたものでも読んでないものの方が多いのだけど。
 それでも国内編、海外編、どちらも一位の作品だけ派読んでいたのに何となく安心。
 
 国内編1位の『老ヴォールの惑星』は、表題作のストレートなSFとしての魅力や、「ギャルナフカの迷宮」の深い感動等、確かにとても優れた作品集だとは思うのだけど、「ベスト1!」と言うにはちょっと小粒な印象も。未読ではあるけど評判から『ハイドゥナン』(4位)辺りがくるんじゃないかなあと思ってた。そう言えば昨年の1位も中短編集か(飛浩隆『象られた力』)。
 2位が瀬名秀明ってのは、読んでないけどなんとも「いかにも」な感じがする。
 5位の『サマー/タイム/トラベラー』は2005年の「マイベスト」。
 11位、『ベルカ、吠えないのか?』は未読だけど紹介読んだだけで胸が熱くなる。
 12位『All You Need Is Kill』は、評判ほどいいとは思わなかったなあ。
 あと、恩田陸が2作ランクインしているのは流石と言うかなんと言うか。
 
 SFマガジン読者投票のみによる第10位『ブルースカイ』が、20位までにすら入っていないのは大いに不思議。ベスト3に入るほどとは思わないけど、それこそ10位くらいにランクインしてても不思議じゃないと思う。
 まあとは言え所詮ランク内の作品を半分も読んでいない私の言うことですから。
 読んでみたら他も面白くて、「相対評価」としてはやむなし、と言うことになるのかも。
 (でも個人的には『All You Need Is Kill』より遥かに上だと思うんだよな・・・)

 海外編。2位の『タフの方舟』を読んでいないけど、それでもなんとなくまあ3位までは堅い感じに見える。1位の『ディアスポラ』はちょっと理系名描写が多くて『万物理論』なんかに比べると(文系読者には)取っ付きにくいところがあると思われるので、どう出るかな、と思っていたけど堂々の1位。3位の『啓示空間』は『ディアスポラ』でなければこれが一位かな、と思っていた作品。『タフの方舟』にはどうも食指が動かないんだけど、エンタテイメント度は高そう。

 4位から6位まで《奇想コレクション》と《未来の文学》並んでいるのは「やっぱ強いなあ」ってところ。他にも9位と12位にそれぞれ1冊ずつ。
 7位《ネアンデルタール・パララックス》は「ソウヤー苦手なんだよなあ」と思って花王か買うまいか悩んでいたら、最終巻3作目があまりに評判が悪いので買わなくて良かったと思っていた本で、こんなに上位に来たのはちょっと意外。2作目までが面白いのかね。でもたぶん読まないけど。ソウヤーは生臭くて苦手なので。
 9位、シェフィールドは、大作や贅を凝らした傑作集の中にあっては仕方がないはいえ、「絶対評価」ならもっと上位に食い込めるのではないかと思う。スタージョンと同位だから充分立派なもんではあるけど。
 13位『マジック・キングダムで落ちぶれて』は僕も大変面白く読んだけど、正直こんなところにランクインするのはちょっと意外。確かにネタのSF度は高いんだけど、話としては地味なので、全く無冠のまま「面白い本」として読み継がれる方が似合っているような。
 16位から20位までが全てファンタジー系って言うのは、(ファンタジーも嫌いじゃないけど)まさに「SFが読みたい!」と思っている読者の僕としては、ちょっと複雑な気持ち。「これはSFではない」とか言って議論するのも面倒なので、あくまで個人的な「気持ち」の問題と言うことにしておくけど。

 国内編、海外編それぞれの結果及び紹介に続いた、小川一水および酒井昭伸のインタビューはどちらも面白く読んだ。小川一水のは作風そのままって気がして興味深かったし、酒井昭伸のほうはちょっと遊びが過ぎる気がしなくもないけどとにかく楽しく読める。ただし、酒井昭伸とはどうも好みが合わないような気も。主訳書で読んでかつ面白いと思ったのは《マッカンドルー》くらいだもの。 
 あ、池上永一のインタビューもあった。これはちょっと放言っぷりが鼻につくところも多いけど、かえって作品には興味を引かれた。「やりたい放題っぷりがいい方に出てるなら是非読んでみたいな」って感じ。

■『ディアスポラ』講義
 文系読者にはありがたい企画。イメージできなかった部分がだいぶ身近になった。

■『デカルトの密室』講義
 未読作品であり、冒頭に「未読の方はご注意を」とあったので読んでません 。

■『断絶と言う継承と、未来と言う遺産』
 山田正紀の言葉も谷甲州の言葉も非常に面白く読んだけど、「対談」ってより「2人にインタビューしました」って感じで、わざわざ2人揃えた意味がよくわからなかった。リンクした話がないわけでもないのだけど。

■『リアル・フィクションとは何か』
 2回も特集しておいて今さら「何か?」ってなんだよ、という爆笑座談会。よくもまあ塩澤編集長の吊るし上げ大会にならなかったものだ。併録の西島大介『SFマンガっち』とともに楽しみたい。

■マイ・ベスト5 
 国内編。結構票が割れているな、当たり前といや当たり前だけど。
 井出聡司の「サマー/タイム/トラベラー」についてのコメント「あり得なかった懐かしい過去」は、風野春樹による作品紹介中の「(妄想の)青春」と並んでスバラシイ。
 仲俣暁生のコメント「SFとかファンタジイとか純文学といったジャンル意識は(中略)そろそろ捨てていい意識だと思う」っていうのは時々言われることだし一理あるとは思うんだけど、じゃあ「それでもオレは“SF”が読みたいんじゃぁ〜っ!!」という気持ちはどうすればいいの? と思ったところで2人戻って中川裕之が『サマー/タイム/トラベラー』につけたコメントを読むと泣けること泣けること。仲俣氏のコメントは結尾の「「世界」なんて存在しない」も、「その通りだけどさ」と割り切れない気持ちにさせられた。世の中には言ってはいけないことと言ってもどうしようもないことがあるのだ。
 野尻抱介が『自閉っ子、こういう風にできてます!』に票を入れていたのにちょっとびっくり。後だしになっちゃうけど、これはちょっと前に某所で「SFを感じるSF外の本」について書いた折、あげようかどうか悩んで結局あげなかった一冊。自分の「SF者」としての感性を再確認。

 海外編。
 票数からでも分かることだけど、『ディアスポラ』はやはり昨年の『万物理論』ほど万人受けする作品ではないらしい。ところどころ「『万物理論』に比べると・・・」というコメントが見られる。それでもほとんど鉄壁だけど。
 そんな中、松浦晋也のように「これまで今ひとつぴんとこなかったイーガンだが」というコメントを付けている人も。へー、そういうSF読みもいるんだ、と、SF界が夢中になっていた『ハイペリオン』をちっとも楽しめなかった自分を棚にあげて思う。
 加藤逸人が『啓示空間』に付けたコメント中、「ゴーメンガーストのような宇宙船」に妙に納得。
 志村弘之のコメントと西島大介の票を見て「おお、『トリポッド』!」と思い出す。そういやランクインしてなかった。誰が見たってファンタジーな作品に投票する暇があったら(以下略。ていうか決してファンタジーが嫌いと言うわけではないんですよ)。
 古山裕樹の『アグレッサー・シックス』へのコメント「明らかにどこか失敗しているけれど」に爆笑。
 前島賢のコメントは文庫読みの僕には他人事とは思えない切実さ。だいたい最近の文庫って単行本とそんなに変わらない価格のものも多いよね。
 向井淳が『啓示空間』について「長いからといって面白くなっているわけではない」にちょっと考えさせられる。確かに「長いこと」によって新たな面白さが生じているわけではないんだけど、ほとんど長さを意識させない本だったと思うんだよなあ。もちろん否応なく腕は疲れてくるけど。

■サブジャンル別ベスト10
 どのジャンルも読んでいない本が多いので詳細な感想は書きようがないのだけど、ひとつだけ。
 「《グイン・サーガ》ってラノベだったのか!」

■このSFを読んで欲しい! SF出版各社2006年の刊行予定
 まずは朝日ソノラマの冒頭を読み、早川書房に戻り、ついでに巻末のSF文庫&Jコレクションの出版予定なんかも見る。保存してある人は『SFが読みたい!』2005年版、2004年版も引っ張り出して比べてみる。これがこのページの「正しい楽しみ方」です(笑)。
 まあね、「読んで欲しいなら出せ!」って話ですわ。
 ていうか、もう期待するのはやめた。期待しない方が喜びも大きいよ、きっと。

 
 
 以上、ぱらぱらと見た時は例年に比べてちょっと物足りない気がしたんだけど、ちゃんと読んでみるとブックガイドより入賞作絡みの「読み物」が多かったのかな、という印象で、読みごたえは十分だった。

 さて、次はSFマガジン600号記念号ですな。
posted by けいりん at 17:17| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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