2011年03月09日

目の前の悲しみに立ち向かうための呪文が欲しい

『魔法少女まどかマギカ』第9話「そんなのあたしが許さない」感想。

さやかのソウルジェムはグリーフシードに変わり、新しい魔女を生み出した。
その半身は魚。人魚型。もちろん、王子を愛し助け、だがそれを王子に告げることができず、海の泡と消えたあの人魚姫に我が身をなぞらえてのこと。
そう。これはやはり、さやかなのだ。

胸元のリボン、単に制服のリボンのような気もするんだけど、第1話で、さやかがまどかの着けてきたピンクのリボンを「母から教えてもらったモテる秘訣」と思っていたことと絡めた解釈もあって。つまり「ピンクのリボンがあれば恭介に振り向いてもらえるかもしれない」という願いの反映、ということ。これはこれで捨てがたい。
っつーか、一から十まで、なんて切ない。

背後を汽車が走っているのは、さやかが初めて闇に飲まれたのが、電車の中だったことを反映してのことか。
鎧姿の上半身は、剣という武器との絡みだけではなく、やはりかねてから関連が指摘されている『鏡の国のアリス』のナイトか。

ほむらに伴われて撤退する杏子。
さやかを探すまどかと遭遇。ソウルジェムの最後の秘密。
これまた大方の予想通りなんだけど、まどかの嘆き、杏子の怒り、ほむらの目を伏せる表情、どれをとっても一級の演出。見せる。
「てめえそれでも人間か!」
「もちろん違うわ。あなたもね」
このやりとりにはほむらの底知れぬ絶望を見てしまう。

まどかの部屋。訪れるキュゥべえ。
この解説、「突然SFっぽくて萎える」とか言ってる人もいるようだけど、どうしてどうして。
私がSFファンだからということとはあまり関係なく、こういう、今まで予想されていた世界観ががらっと塗り替えられる瞬間、好きだなあ。ちょっと解説然としすぎているかなという気もしなくはないけど、それもやっぱり私はむしろ好きなくらいで。
前回のキュゥべえの復活、「スペアの体に意識を転送」だと思ってたけど、今回のキュゥべえの話を聞くと「種族全体で意識や情報をほぼ共有」かな、という気も。個体を軽視し、種族全体の利益を優先するのって、その手の生命体の定番だよね。「この宇宙のために死んでくれる気になったら」ってさらりと言ってのけるあたり、「どこまでも異質な生命体」ってことを語り尽くして有り余る。素敵だ。
あと、場面ごとにキュゥべえのいる位置、明かりの加減と色、ベッド周辺の椅子の数、椅子が空かぬいぐるみが乗ってるか、そういうのが違ってて気になる。考えてみたけど全く読み解けなかった。それぞれ別の時間軸の画、っていう可能性はあるかなあ。でもわざわざここでそれを描く意味が分からないんだよなあ。このシーンが「何度も繰り返されたことだ」ってのを暗に示している?
まどかが結構しっかりキュゥべえと言いあっているのが印象的。「やっぱりあなた、あたしたちの敵なんだね」とか、「当たり前でしょ」とか、ちょっとぞくっとした。

杏子の部屋(どっかのホテルかなんか?)。杏子とキュゥべえの対話。
「さやかのソウルジェムを取り戻す方法はないのか」との問いに、「知る限りではない」「君たちがどれほどの不条理を成し遂げたとしても驚くには値しない」「前例はない」・・・・・何も言ってねえええええええ! 何も言わず嘘はつかずにいたずらに希望を煽る。営業マンというより政治家だよ、これは。

果たして希望を持ってしまった杏子、まどかを呼び出し。
ここでの水滴が落ちてくる描写って何だ? ほむらと関係あるかな。さやかと杏子がやり合ってる所にほむらが現れた時もこんな水滴が。
作品全体で、要所要所に「水」が出てくる気がするのも気になっているんだが。

ここのまどかと杏子のやり取り、いいよなあ。
これで杏子が言うとおり「最後に愛と勇気が勝つストーリー」になればなあ。
だがもう騙されないぞ。
・・・と思いつつ、ストレートなものでないにしろ希望がないものかと期待してしまう。

杏子のキャラが初回登場時とは違いすぎるように思う向きもあろうけれども、これこそがさやかの戦いと頑なな理想が残した、わずかな希望の光、なのかもしれない。
「あたしだって、考えてみたら、そういうのに憧れて魔法少女になったんだよね」と杏子は言う。
父を助けようとした自分の願いが、最後には父を破滅させてしまった、それが彼女に理想を捨てさせることになった。だが、ソウルジェムの真実という深い絶望の底で、なお理想を捨てないさやかの姿が、杏子に忘れていた想いを蘇らせた。
理想を守るといえば聞こえはいいが、さやかが頑なになっていったのは、前回書いた通りそれだけのことだとは思えないし、その底にはより根深くより愚かなエゴがあったんだと思う。
だが、たとえそうであっても、さやかが大切な人を、大切な想いを守ろうとした、そのことは変わらない。むしろ、エゴにまみれてなお何かを守ろうとしたからこそ、それは故意にエゴをむき出しにして生きる杏子を変えたと言っていいのかもしれない。
そして。
だからこそ、杏子はさやかを捨て置けないのだ。

何かを察知して教室をでるほむら。やっぱりさっきの水滴かな?
まどかと杏子はさやか魔女の結界へ。
結界入り口には「LOVE ME DO(私を愛して)」。
だああああああああああっっ(滂沱)
さやかは、どこまでもさやかだったんだよなあ。
恭介を助けるためだけに魔法少女になりながら、「正義の味方でありたい」「大切な人を守るために」という偽善を捨てきれなかったさやかは、「女の人に酷い扱いをする男たち」への怒りから闇に飲まれたようでいて、その深層にあったのはやはり「振り向いてもらえない自分」だったわけで。

結界入り口の廻廊にはさやかの記憶を映す窓。
魔法少女になろうとしない自分に引け目を感じるまどかと、それを諌める杏子。
これだけ言われて、まどかはどうするのかな。やはり魔法少女になるのか?
今となってはそれすらわからない。

結界の中心。
呼びかけるまどか、攻撃をせずに守りに徹する杏子、その姿はどちらもひたすらに痛々しい。
最初にまどかが呼びかけた時、顔の辺りからもやが現れるんだけど、あれ、涙だったりしないんだろうか。

まどかを握りしめるさやかに対し怒りの表情を浮かべ、初めて攻撃にでる杏子。
まどかを守るため、というより、さやかに対して、「お前、何でそこまでするようになっちまったんだよ!」って怒りだったんじゃないか。

床がくだけ落下する一同。
「せめて一度ぐらい、幸せな夢を見させて」
この杏子の独白は胸に迫る。
自分のこと、なんだろうけど。
でもその夢見る「幸せな夢」は、さやかが救われること、なんだよな。

階下には恭介の影があるけど、あれは単にさやかの願望の反映、だよなあ。
これで恭介が結界内に取り込まれて死んでたりしたら救われない。
誰がって・・・さやかが。

杏子はこの時点で限界だったんだろうな。
だから現れたほむらは「杏子、あなた・・・」ってわずかな悲しみを滲ませ、杏子自身も捨て身の攻撃にでる。
髪を解き手を組み合わせ魔力を集中する杏子。
この姿。もちろん狙ってるんだが。

まるで神への祈りじゃないか。

杏子って、神父(?だか牧師だか司祭だか宮司だかわからんけど)の娘で、回想シーン見る限りでは、もともと本人も信仰を持ってたっぽいわけで。
「幸せな夢」を願う杏子も「神様、頼むよ」って呼びかけてるけど、ここの無言の祈りのほうが、もっと切実に感じる。
ここでの杏子はもう多分、具体的な何も願ってはいない。
ただ、祈る。ひたすらに、無心に。最後の力を集めるために。最後の愛を伝えるために。
「祈り」って、究極的には、「何かを願うこと」ではなく、1つの感情状態だと思うんだよね。ここでの杏子にはそれを感じた。

そして。
限界が来た自らのソウルジェム=自分自身とともに、さやかを打ち砕く杏子。

鬱展開、なんだろうか。
いや、普通に考えればそうなんだろうけど。
悲しい展開には違いないんだけど。

杏子がまどかを呼び出したシーン。杏子が手に持ったソウルジェム、すでに底のほうに汚れがたまってきてるんだよね。
これは、杏子がさやかの生き方に倣い始めている、ということだと思うんだけど。
さらに、杏子の最後の戦いは、ほとんどずっと、防御戦で。さやかを救うためのもので。
そんな杏子が最後の最後に自らを砕いたのは、魔女になることの拒否、とも言えるんじゃないか。
さやかの生き方を貫き、魔女になることを拒否し、さやかも魔女として生き続ける運命から解放する。
これは、「さやかの生きた道」の、1つの勝利ですらあるんじゃないか。
ささやかな、そしてあまりにも悲しい勝利ではあるにしても。

だがもちろん、異なる世界の異質な生命体にはそのようなことは何の意味も持たない。
「それ」が気にするのは常に結果のみ。望む結果を得るために、「それ」は手段を選ばない。
「本当に美樹さやかを救える望みがあったの?」
「まさかw w w そんなの不可能に決まってるじゃないかw w w w」
うわああああああああああああ!!
もちろんそういうことだろうと分かってた!
分かっちゃいたが、ここまであからさまに言われると!
さすがに殺意がわくよ! もう呪いを生み始めちゃうよ! マジでグリーフシードになる5秒前だよ!

「これでもう(略)この街を守るためには、まどかが魔法少女になるしかないわけだ」
そこまで。そこまで魅力的なのか。まどかの生み出すことになるエネルギーは。
「やらせないわ。絶対に」ほむらは言うけど。
さて、まどかは・・・

ところでほむらの家、「2叉路の分岐点」にあるのはなかなか象徴的だよね。
未来がどっちに転ぶか、その分かれ目にいる、という感じがして。
そういえば、さやかの死体を抱いた杏子とほむらがまどかと出合うシーン、あそこも線路の分岐点あたりなんだけど、やっぱり何か重要なポイントだったってことなのかな。
全作中の2叉路を洗い出したりすると、なんか分かるかも。

なんにせよ、いよいよクライマックス、ですな。





というわけで次回、「もう誰にも頼らない」。ほむらの声で、ほむらの台詞タイトルの予告ってだけでぞくぞくするわ。
posted by けいりん at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 魔法少女まどか☆マギカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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