2006年03月04日

あなたが死んではいけない理由

 あなたが僕の知人でないなら、当然、僕はあなたのことを全く知らない。

 また知人であっても、知らないところが沢山あるのは当たり前で。
 その上、僕が会わないでいる間、あるいは会っている間にすら、常に人は変わり行く。
 だから、あなたが誰であれ、次に会うあなたは、僕の知っているあなたとは、たぶん、別の人だ。

 僕は毎日誰かと出会い続けている。
 僕にとってそれは、いつだって驚きに満ちた体験だ。
 そしてたぶん、喜びに満ちた体験だ。

 もちろん、全てが幸福の内に終わるわけではない。
 僕とあなたは明日悲しい別れを迎えるかも知れない。
 数年後、ひどい喧嘩をしてそれきりもう会わないかもしれない。
 あったとたん、互いに激しい嫌悪感を抱き、憎みあうかもしれない。
 興味深い点や共通の話題を見いだせず、ちっとも関係が深まらないかもしれない。

 それでも。
 僕はあなたとの新しい出会いを望む。
 なぜなら、どんなものであれそれは、あなたに出会う事なしには得られなかった、ひとつきりの、かけがえのない経験だからだ。
 一度きりの、新鮮な驚きだからだ。
 その意味で、それは喜びなのだ。

 そうだ。
 僕はあなたと出会いたい。

 会う機会さえないままに終わるかもしれない。
 普通に考えれば、そんな相手の方がずっと多いのだ。
 けれども僕は、惜しんでやまない。
 会うことなく、いつか出会うという可能性すら失ってしまった、そのことを。
 出会い、友情を育み、愛しあい、憎みあい、すれ違うことがなかった、多くの人の死を。

 もちろんこれはエゴだ。
 単なる僕のわがままだ。
 でも、そんなわがままに、少しでも耳を傾けてくれるなら。
 できる限り、生きていて欲しい。
 あなたが生きていることが、僕の宇宙に、かけがえのない可能性をひとつ付け加えることなのだから。
 まだ出会っていない、ひょっとしたら出会うことのないかもしれないあなたがそこにいる事が、僕の世界を、限りなく豊かにしてくれているのだから。
posted by けいりん at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 思想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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