2004年01月14日

『不思議のひと触れ』

シオドア・スタージョン、河出書房。

スタージョンといえば『人間以上』。ずいぶん前に読んだのではっきりとは覚えていないのだけど、不思議に引き付けられたことだけはよく覚えていて、今でも再読の機会を待ちつつ本棚にしまってある。

今回のこの本はスタージョンの短編集。代表作に関する印象が上記のような状態で、その他には『夢見る宝石』も『コスミック・レイプ』も読んでいない僕が、なぜこの本をふらふら買ってしまったのか。確かに僕はSFファンだが、SFと名の付くものは片っ端から読みあさると言うタイプではないし、今後ぜひ買わなければならない何冊かの本の出版を待つ身としては、決して安い値段ではなかった。そのうえ(いつものことだが)家には積ん読の本が山ほどあり、その日だって別の階で、新聞の書評で気になった社会学系の本を買ったばかりだったのである。

じゃあ、なぜ、買ってしまったのか。
それは結局、最初に書いたような漠然とした印象だけで、「自分はスタージョンが好きだ」と深く感じてしまっていたからなのだと思う。

この本を読んで、その感じ方が正しかったことがよくわかった。
一編目となる「初めて売れた作品」『高額保険』は、単純ながらも非常に出来のいいショートショートだったし、その他の作品にしても、ブラッドベリに通じるような叙情と、魅力的なキャラクター描写、そして何より小説としての上手さが光っていて、実に楽しい短編集だった。

『裏庭の神様』なんかは、全く別の書き方で星新一とか筒井康隆なんかも使っていそうな骨組みなんだけど、そういう話だからこそ、スタージョンの作家性がよく現れている作品だと思う。それは解説の大森望も書いている通り、作業の具体性と、人物描写の魅力ということで、星新一がたんたんと話を進め、筒井康隆が状況をこれでもかというぐらい暴走させるのに比べると、ちょっとイヤミなぐらいバランスのとれた、それでいて十分に魅力的な「上手い」短編に仕上がっているのである。落ちも正直想像は付くけれども、これだけ読ませてくれれば文句は言えまい。

そんなわけで、これは晶文社から出ているというもう一冊の短編集も読まねばなるまいかなあと思っているところ。非SF作品が多いので、SFファンには物足りないかもしれないが、スタージョンが好きなら必読の一冊だと思う。また、なんでもいいから重過ぎず楽しい、けれども読みごたえのある短編が読みたいと思っている人たちへもお勧め。表題作はファンタジーと言えば言える、そのぎりぎりのところで成立した傑作。




不思議のひと触れ
シオドア・スタージョン , 大森 望

発売日 2003/12/22

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posted by けいりん at 15:58| Comment(6) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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